軌道胡蝶の夢 円山すばる
軌道胡蝶の夢
私の住む古い家は線路のすぐ傍に建っている。窓を開けると古い私鉄の線路が見える。通過音はするが、時刻が解ると母さんと笑い合う。
学校は夏休み。布団を出たが今日は電車の音がしない。妙に寒くて静かだ。大雨で電車止まったのかな。カーテンを開けると窓の外に見えたのはいつもの線路ではなく真っ赤な星と茫漠と広がる黒い宇宙だった。
「はあ? 何これ」私は目を丸くし、思わず笑ってしまった。「誰かの悪戯?窓に絵でも貼った?」
とりあえず剥がそうと窓を開けようとする、ふと窓の外で沢山の光が走った。無数の真っ赤な筋。絵じゃないの? と思った瞬間、部屋が揺れて吹っ飛ばされ、箪笥に体をぶつけた、痛いと言う間もなく母さんが部屋に飛び込んできた、
「伏せて、スペースデブリが、」
母は倒れた、燃え盛る金属の槍に貫かれたのだ、喉から悲鳴が漏れた。
「お母さん!」
私はガバッと起き上がった。そこは布団の上だった。夢だったんだ。ほっとして窓のカーテンを開けようとして恐ろしくなった。本当に夢だった? もしまだ宇宙に居たら……? ふと窓の外を走る電車の音がした。私は、心の底から安堵した。それにしても静かだ。夏なのに、吐く息が白い。
了
空色杯運営様(@kro_ba_) 主催
第19回空色杯 500文字未満の部 参加作品
『軌道胡蝶の夢』 円山すばる
一言紹介:窓の外は、いつも同じ景色とは限らない。
(497文字)
