円山すばるの詩・短歌集②
円山すばるが2023年に
SNS(X)で投稿した主な短歌をまとめました。
かなりたくさんあります。ぎっしりあります。
どうぞごゆっくりご覧ください。
(※ これらは本にはまとめておりません)
2023年 円山すばる SNS投稿短歌
さよならも言わずに去りました くすりの名まえは「寄る辺なき夜」
またこんどそれじゃあどうもを繰り返し それでも少しも近づけなかった
君だってサルビアの蜜とか吸ってたろ 苦笑しないで目そらさないで
恩人の新盆も過ぎ寒い秋。その気高さを忘れずにいる
「あの車は老人ホ―ムへ向かうバン。」(僕も何時か行く)という顔
ありがとう屋根ある場所と寝る部屋を消えない傷を涙と怒りを
人間はパンのみに生きるのではないはずだ怒鳴られながらレジを打つ夜
金のためあなたが捨てた友達が家族が私の大切でした
回春も不老不死もいらないよ金木犀か何かでありたい
「可愛い」と言わないでくれこの声が憎らしいから短髪にした
椅子に落ち深い孤独に沈み込む深夜にとりこむ服は冷たい
衣替え圧縮されてた思い出もズボンも袋に詰めよう。サヨナラ
しのびないポストに入った手作りの求人チラシをそっと畳んだ
チラシでも誰かの手描きの文章に寂しさがあるじっと見つめる
がらんどうの部屋の中でひとつだけ手書きのチラシだけが暖か
どうやって到達すればいいだろう君の境地にあの日の過去に
“生活”をやめたいという君の顔はっきり浮かぶ疲労を見てた
「ただ元気でいてくれればそれでいいからね」弱音なんか言わないあなたが
電話越しに励まされてる慟哭し「生きる」バトンをこころで受け取る
振り払い親より守ってくれた優しい手握りたくて月を見上げる
感情を押し殺すことが知性なら私は一生人にはなれない
他所行きの顔で狭いバスの席真実なんか知りたくなかった
制服のスカート下は短パンで怖いものなど何もなかった
死んだ目でうどんに入れた肉団子愛で闘えるわけがないだろ
私の火に油を注ぎ水投げるおまえが疑う私の杞憂
君だけは大丈夫だと思ってた海の藻屑か泡か、選べ
蒸しパンが机の隅で丸くなる2匹の部屋に影が落ちてる
ガラケーとスマホで通話することが無くなる日が来る触れなくなる
諦めてる君のきずあとが見えたこと風呂の中で許せなかった
燃えるごみ生の実感を捨ててくる生きてる限りゴミは出るけど
鈴虫はお利口隠れて泣いているトンボは秋と逝ってしまった
「満たされていれば人は創らない」とか言ってたのは自分だったか
トイレ中届いたメールをなーんにも見なかったことにして流した終了
太陽を期待させて悪かった梯子は外せ躊躇をするな
私がさ「人間にはもう無理ですよ」そう言った時なんて返した
情もなく処理した私のお仕事はインターネットのゴーストになる
時代にも生にもしがみつけなくて 毛布で光をさえぎっている
苦しみが過ぎ去る事を待っている思春の酸雨が終わってくれない
美しい池を見ていた湧水のように命は湧いて沁みゆく
いつの日かにっこり笑える日が来るよマスクを取って泣いてもいいよ
境界線なんて超えていられない君は彼方で好きに生きて、と
「ねえママ」と呼ぶことはもうない人のこと想う踏み外せば私も同じだっただろうに
人生を返せと私を怒鳴り付け怒った母のことを見てきたはずだ
要らないとあなたが捨てたその希望 戻ってくるまで大事にしとく
東雲を背中に集積所に行ったこの服を着て闊歩した街
老いと死を宇宙規模で見られたらいつか誰かと星になれたら
さみしいを言える人がいなくなる冷たいドアの前で泣いてる
斎場の扉しずかに貴女を見送って「最後の別れ」の向こうで会おう
もういいよを言われるのを待っていた自分で言うのが恐ろしかった
手をつなぎみんなでゴールをしたくても別に死にたくなくても孤独
宝物希望だった残骸を未練がましく温める冬
異郷人母さんをずっと待ってた悲しい話は終わりにしましょう
創作に頼ることをやめようと自分の値札をつかんで泣いた
ほのめかす友へ手紙の返事書く連れてってくれと書けないごめん
一枚の手紙で引き留められる生 ポスト見てるよ毎日待ってる
ご遺族の傍を通りすがった日のんきに付けた染みを洗う日
文通や君の葛藤を知っているその苦しみを分かち合えたら
スマホから政治思想でやつ当たる貴女も星になれますように
『老人』と括り称すな我が祖母はこの世で一人。私の家族
ウィンドウ閉じてペンを走らせる救えないものもこの世にはある
つまらないことに目くじら立ててるとつまらん大人になってしまうよ
そっとしておいてコーヒーはキリマンジャロ凍った豹の隣に座り
この情けはあなたの為ではないけれど人の善性をまだ信じてる
極寒の冨士の高嶺に雪積もる二人で登れば帰って来れる?
あなたから貰った恩が重すぎて誰かにかえすと泣きそうになる
富士山のように高すぎる自意識に降り積もるのは雪か痛みか
雪の華仲間たちの輪を外れ君が起きないように旅立つ
「さよなら」が処方箋の薬ならこんなに苦しまなくてすむのに
おばあさん 毒果をくださいこれ以上苦しまぬように泣かないように
以上